<▲写真:アンテナの60GHz帯域での実証実験の模様> |
まず、開発背景には5Gから使われ始めた高い周波数帯の電波の性質がある。高周波数帯の電波は直進性が高く、障害物を回折しにくい。4G、3Gなどで使われてきた1GHz前後や2GHz前後の帯域と異なり、特に28GHz帯などのミリ波は基地局から見通せない場所、周囲を障害物で囲まれた場所などに電波が届きにくくエリア化しにくい点が大きな課題となっている。
この課題はドコモに限らず、どの通信キャリア/通信サービスでも共通したもので、各社それぞれ対策技術の開発に取り組んでいる。
ドコモは5G以降の世代で利用される高周波数帯で安定かつキメ細かな通信エリアを構築するためのツールを開発してきたが、今回実証実験に成功した技術もその一つ。
高周波数帯の電波を伝搬するケーブル(伝送線路)である誘電体導波路を、床や壁、天井、什器などに埋め込んでも、その近くに置くだけで通信エリアを構築できるアンテナだ。
この技術を活用すれば、遮蔽物が多い環境下でも誘電体導波路で見栄えを悪くすることもなく、キメ細かな高周波数帯のエリア構築が可能になるという。
今回のアンテナは、高周波数帯の電波を伝搬するケーブルにプラスチックの小片を接触させることで接触箇所から電波が漏洩するという物理現象を利用している。
実証実験では、誘電体導波路を埋め込んだ板にアンテナ(プラスチック小片)を置くことによって、その周辺に通信エリアを構築できた。
しかも複数の箇所に同時にアンテナを置くと、それぞれの場所で同時に通信エリアを構築できる。さらに、アンテナの大きさや配置方法を変えることによって構築される通信エリアの範囲や方向のコントロールをできることも確認されている。
一方で、アンテナとなるプラスチック小片を誘電体導波路から離すと電波の漏洩を止めることも可能なので、無駄な電力放射の低減によるエネルギー利用の効率化にもつながるという。
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