<▲図:「BOOX Mira」の使用イメージ> |
BOOX Miraは13.3インチのE Inkディスプレイを搭載するモニターで、ONYXの公式通販サイトでは既に発売となっていた。その件及びBOOX Miraシリーズの詳細はこちらの記事を参照して欲しいが、本記事でも概要、そしてDASUNG製品やBOOXの他シリーズ品との違い、日本での販売チャネル等に関して記していきたい。
まず、BOOX Miraシリーズには今回発売となった13.3インチモデルの他に、25.3インチの「BOOX Mira Pro」もラインナップされていて、今年後半にリリース予定だ。おそらくBOOX Mira ProもSKTから発売されるだろうが、少なくとも今回は13.3インチのBOOX Miraの発売だ。
BOOX Miraについて
BOOX SHOPとSKTでの販売価格、付属品等の違い
日本でBOOX Miraを購入する方法は複数ある。一つはONYXの公式通販サイト「BOOX SHOP」。BOOX SHOPの場合は、注文フォームへの住所・氏名等の入力が英語(ローマ字)になるという点、支払い方法が「PayPal」のみという点がネックになるかもしれないが、価格はSKTより安価。799.99ドル(本記事執筆時点での為替レートでは約88,587円)で送料込みだ。一方、SKTは同社直営の通販サイト「SKTNETSHOP」、Amazon上のストア、Yahoo!ショッピング上のSKTストアの3チャネルで販売し、価格は96,800円。送料はAmazonとYahoo!ショッピングでは無料。
価格だけを比べると直販サイトからの個人輸入の方が安価だが、SKTではBOOX Mira本体パッケージに加えてミヤビックス製のノングレアタイプのディスプレイ保護フィルムが付属するので、フィルム代が2,000円前後と想定するとONYX直販サイトとの差は縮まる。また、サポートを正規販売代理店であるSKTが担当してくれる安心感があるので、基本的にはSKTでの購入が無難な選択肢だろう。
後はSKTNETSHOPかAmazonかYahoo!ショッピングか、という違いで、これはユーザーそれぞれ異なると思う。
すでに予約販売開始となっているが、実際の出荷日は9月28日以降。SKTNETSHOPとYahoo!ショッピングでは9月28日より順次、Amazonでは10月2日から4日に発送予定というように若干異なる点にも注意したい。
- BOOX SHOP/BOOX Mira製品ページ
- SKTNETSHOP/BOOX Mira製品ページ
- Amazon.co.jp/SKTSELECT/BOOX Mira製品ページ
- Yahoo!ショッピング/SKTストア/BOOX Mira製品ページ
BOOX Miraの概要と解像度について
BOOX Miraシリーズについての詳細はこちらの記事を参照して欲しいが、BOOX Miraは、従来のBOOXシリーズのようなAndroidタブレットではなく、純粋なモニター。HDMI入力(mini HDMI端子)と、USB Type-Cでの入力に対応した13.3インチのE Inkディスプレイ搭載モニターだ。<▲図:「BOOX Mira Pro」と「BOOX Mira」> |
「DASUNG」の「paperlike HD-FT」、「Not-eReader」シリーズのように、PCモニター用途として使える実用レベルの描画速度と残像対策が導入された点が最大の特徴。
<▲図:13.3インチの「BOOX Mira」。カバーを外した状態> |
DASUNGの製品も、BOOX Miraシリーズ同様、描画速度が速く残像処理が優れているため、マウスカーソルの移動や操作はもちろん、Webサイトや文書等のスクロール表示なども実用レベルのクオリティにある。今回リリースされるBOOX Miraシリーズも実用レベルのモニターのようだ。
<▲図:13.3インチのE Inkモニター「DASUNG paperlike HD-FT」(右側の端末) 。日本ではSKTが販売中> |
<▲図:Androidタブレット兼E Inkモニターとなる10.3インチの「DASUNG Not-eReader 103」。日本未発売> |
BOOX MiraのE Inkディスプレイの解像度は2,200 x 1,650(207ppi)で、勿論ドットバイドット表示もできるが、少なくとも公式サイトの注記やYouTubeで公開されている既存のレビュー動画を見る限り、実用レベルの速度で使おうとするならば、Windows PCの場合で1,400 x 1,050ドット、Macの場合で1,600 x 1,200ドット程度での使用が推奨されている。ただし、下に掲載したタイの方のレビューを見ると、あまり解像度を下げたり、スケーリングを大きくせずとも実用できるのかもしれない。
なお、筆者はDASUNGのpaperlikeを使っていた時期があるが、BOOX Miraも共通した難点があるように見えるので触れておきたい。
上記の動画の場合はそうでもないが、BOOX Miraのレビュー動画を幾つか見ていると、解像度を下げる、もしくはスケーリングアップは必須だと感じる。結局の所、PC用途ではマウスカーソルの速度が十分に速くないと使い物にならない。そのため、DASUNG paperlikeシリーズ、BOOX Miraシリーズ、いずれにしても最も速い描画モード、スピードモードを選ぶ必要があると思う。もしくは一つ下の設定でも大丈夫かもしれないが。しかし、スピードと画質はトレードオフの関係にあり、描画モードやスピードモードの設定によってスピードを重視すると画質が粗くなる。フォントも汚くなる。最終的に見にくくなるので、スケーリングを上げる必要が出てくる。
メーカーがWindows PCの場合には1,400 x 1,050ドットでの使用を推奨と書いているのは、速度と見やすさ(画質)のバランスを考慮した実用上限だと考えられる。実際にその程度に落ち着くと推測されるし、DASUNGの製品でもスケーリングを200%程度にして使っていた記憶が筆者にもある。
最終的には視力、画面と顔の距離、部屋の明るさなどの条件に大きく左右されるので、適切なスケーリングや解像度の設定は人によって異なると思うが、購入前の想定よりも一段階上のスケーリングでの使用になると考えて購入する方が無難だと思う。
DASUNG paperlikeシリーズでもBOOX Miraシリーズでも動画視聴すら可能だが、そのためのモードは普段のオフィス作業には不要だと考えると思う。ところが、カーソル操作、ページのスクロール操作、ウィンドウ操作などをストレスなく素早く行おうとすると、意外と動画視聴時並みの描画スピードが必要になる。この点はYouTubeレビュー動画などを見ても分かり辛いと思うし、恐らくBOOX Miraシリーズも同様だと思う。
そうなると、13.3インチでも複数のウィンドウを並べて見比べるような使い方は少々厳しくなる。スケーリングを200%以上にすると、作業領域が狭くなるためだ。しかし、エディタやブラウザ、WordやExcelなどを全画面表示で使う分には全く問題ないし、勿論並べて使うことが不可能という訳でもない。また、私の意見はDASUNG paperlikeの使用に基づくものなので、BOOX Miraでは当てにならない可能性もある点をご了承頂きたい。
私の場合は、正に下のイメージ写真のように「Surface Pro」を左側に、DASUNG paperlikeを右側に置いて、BluetoothキーボードとBluetoothトラックパッドをpaperlikeの前に置いて作業していた。paperlikeを拡張モニタにしてエディタを全画面表示して、Surface Proに資料やWebブラウザ等を表示したり、Photoshop等の作業をするといった使い方だ。
<▲図:「BOOX Mira」を「Surface Pro」のセカンドモニタとして利用するイメージ> |
液晶ディスプレイも併用するなら眼精疲労の軽減にならないのでは? という疑問が沸くと思うが、私の場合は明らかに楽だった。E Inkディスプレイを注視して作業している時に、液晶画面からの光も顔には当たる。ところが、液晶ディスプレイの光が目に真っすぐ入ってくる訳ではないので、直視し続けるより楽になるのだと思う。
しかし、本格的にデスクトップPC用モニターとして使う、もしくはノートPCでもメインモニター代わりに使うのであれば、13.3インチは少々厳しいと感じる。勿論用途次第だし、使い方次第だが、ベストな選択肢は25.3インチのBOOX Mira Pro、もしくは同じく年内リリース予定の「DASUNG paperlike 253」を待つことだろう。とはいえ、25.3インチの製品は20万円を超える価格なので、コスト面で厳しい。となると、BOOX MiraやDASUNG paperlike HD-FTの使い方を工夫して、上手く活用する方が良いかもしれない。
話をBOOX Miraの特徴に戻そう。
BOOX Miraシリーズには、表示モードを細かく調整できる設定ソフトウェアが用意されていて、基本的にはそのソフトありきで使うことになるようだ。ただし、単に映像出力するだけなら、ひとまずHDMIやUSB Type-Cで繋ぐだけでも可能。ただし、モード変更等の細かなカスタマイズはソフト必須となる。
また、Androidタブレット型のBOOXシリーズと違い、BOOX Miraシリーズにはバッテリーは内蔵されていないので、モバイル用途で使う場合にも電源確保は必要になる。とはいえ、BOOX Miraの場合は、USB Type-Cでの給電なので実際に電源確保に困ることはないだろう。
基本的に明るい場所ならどこでも使えるが、フロントライトも搭載されているので、薄暗い場所でも使えるし、明るい場所でも見えにくい場合にはフロントライトをつけると多少見やすくなると思う。
いずれにしても、日本で気軽に購入できる実用レベルのE Inkディスプレイが新たに登場することになり、大いに期待される。
E InkモニターにPC画面を表示する方法
DASUNG製品やBOOX Max Lumi等
PCやスマートフォン、ゲーム機など各種機器の映像をE Inkディスプレイに表示できる製品は、前述したDASUNGのpaperlikeシリーズ、Not-eReaderシリーズ、BOOX Max Lumiのように、実は複数存在しているし、アプリ/ソフトウェアを使う方法もある。それらとの違いについても触れておきたい。- BOOX Miraシリーズ
- DASUNG paperlikeシリーズ
- DASUNG Not-eReaderシリーズ
- BOOX Max Lumi
- superDisplay
主な選択肢は上記の通り。
DASUNG製品の特徴やBOOX Miraとの違い
DASUNG paperlikeシリーズは今回のBOOX Miraシリーズ同様、E Inkモニター製品で、ONYXより数年先行してリリースされた。先駆者だけあって25.3インチモデルの発表も早かったし、随分進化するようだ。<▲図:年内リリース予定の「DASUNG paperlike 253」> |
BOOX Miraシリーズとの性能差はYouTubeのレビュー動画を見る限りは、そう大差ないように見えるが、使用面での根本的な違いがあるので触れておきたい。
DASUNGの製品は、基本的にPC側にソフトウェア/ドライバをインストールする必要がない。HDMI入力のみで自動認識して映像が出力される。タッチ操作対応のWindows PCの場合にはUSBも接続すれば、E Ink側でのタッチ操作も可能になるが、タッチ操作が不要ならHDMI接続のみで構わない。普通の液晶ディスプレイと同じく、映像用のケーブル接続のみで動くシンプルさが魅力だ。WindowsやMac側ではOS標準の設定画面で解像度やスケーリングを設定する。では、映像モード、スピードモード(リフレッシュモード。リフレッシュレートとは別)などはどのように変更するのかというと、DASUNGはハードウェア側にその手段を用意しているので、ボタンで変更する。残像を消すための強制リフレッシュもボタン操作で行える。一見ボタンが少ないNot-eReaderも、音量ボタンとコントラストボタンの同時押しなどで全ての操作が可能な設計になっている。
PCにソフトウェア/ドライバを入れる必要がないので、入力機器も制限されない。ゲーム機でもテレビ用セットトップボックスでも何でも基本的には接続できるし、モードの変更やコントラスト調整、フロントライト調整などの操作は全てハードウェア側のボタンで行うことができる。活躍の範囲が広い。また、技適の問題があるものの、Not-eReaderはAndroidタブレットでもあるので、希望を言えば技適等の認証を得て日本市場でも正規販売して欲しい。なお、DASUNGの製品に関してはオフィス用途では強制リフレッシュボタンはほとんど使わなかった記憶がある。残像処理が優秀なのだろうが、モード変更やスピード変更、コントラスト調整もほとんど変えなかった。今思うと相当優秀だと感じるので、paperlike 253も期待できそうだ。
一方のBOOX Miraシリーズは、強制リフレッシュとコントラスト調整、フロントライト調整に関してはハードウェア側のボタンやホイールで行うことが可能ながら、映像モードの切り替えなど細かな調整はソフトウェアで行う形式を採用している。そのため、対象機器が制限される。少なくともWindows 10、Windows 7、macOS、そしてAndroidとiOSには対応しているようだが、PCではAMDのGPUには非対応など、多少制限がある点には注意が必要だ。
ソフトウェアのインストールは面倒ではあるし、機器/プラットフォームの制限も出てきてしまう一方、メリットもある。ボタン操作はモニターに手を伸ばす動きが面倒と言えば面倒だが、ソフトなら手元のキーボードやトラックパッドでの操作で済む。
とはいえ、設定変更手段をハードウェアに搭載するかソフトにするか、という点で設計思想が両社で異なるので注意が必要だ。好みも分かれると思う。ソフトウェアのインストールやUSB接続を嫌う場合には、DASUNGのpaperlikeシリーズの方が無難だろう。DASUNGのpaperlikeシリーズも国内正規販売代理店をSKTが担当しているので、SKTで購入できる。
→「DASUNG」の「paperlike HD-FT」
BOOX Max Lumiを使う方法
AndroidタブレットのBOOX Max Lumiを使う方法もある。BOOX Max Lumiは13.3インチのE Inkディスプレイを搭載するAndroidタブレットながら、micro HDMI入力端子を備え、セカンドモニターとしての利用も可能となっている。<▲図:「BOOX Max Lumi」> |
しかし、モニター用途専用で設計されたBOOX Miraシリーズと違い、BOOX Max Lumiのセカンドモニター機能は、おまけ的要素に過ぎないので、本格的にトラックパッドやマウスでカーソル操作を正確かつスピーディに行いつつPC作業をしたいのであれば、BOOX Miraを選ぶべきだろう。一方、遅くとも構わないのであればBOOX Max Lumiでもいいのかもしれない。
アプリ「superDisplay」を使う方法h
Windows PCのセカンドモニターとしてAndroid端末を使う場合、「superDisplay」というアプリを使う方法もある。この方法はBOOXシリーズだけでなく、Android端末ならスマホでもタブレットでも使えるが、当然E Inkディスプレイ搭載製品に最適化されたアプリケーションではないので、BOOXシリーズのタブレットにsuperDisplayを入れて使うよりも、BOOX Miraなどの専用モニターの方が本格的なPC用途には適している。いずれにしても、BOOX Miraは現状では実用クラスの13.3インチのE InkモニターとしてはDASUNG paperlike HD-FTと並ぶ、ベスト選択肢の一つに見えるので、E Inkモニターの実用製品を待っていた方には嬉しいニュースだと思う。