<▲図:IIJ 2021年3月期 連結業績説明資料より> |
同社の個人向けモバイル通信サービスは「IIJmio」(アイアイジェイミオ)の名で展開されていて、契約回線数は2020年3月末時点で約103万4千回線と、いわゆる格安SIM/スマホサービスの中では「UQ mobile」「OCN モバイル ONE」らと共にトップシェアを競う強豪サービスの一つだ。MM総研による調査では昨年9月末時点での「独自サービス型SIM」の保有回線数ではシェアトップとされている(MVNE提供分含む)。
ところが、IIJmioの回線数はここ2年間、微減傾向が続いていた。一時的に増加してもその後に減少するなど、変化はなだらかだが2019年6月末の107万4千に対して2021年3月末は103万4千と、若干減っている。
しかし、新プラン「ギガプラン」の投入によって足踏み状態は解消されることになりそうだ。
同社の決算発表では、新プランへの加入回線数がゴールデンウィーク明け時点で約35万回線に及ぶことが明らかにされた。その内、約15%が新規回線だという。単純に35万回線の15%を算出すると52,500回線となり、3月末時点の数字に上乗せすると108万6500だ。この2年間の各四半期毎の回線数は上図の通りだが、すでにそれらの数値を超えていることになる。
新プラン「ギガプラン」は格安SIM/スマホサービス市場において「OCN モバイル ONE」らと共に最安クラスの料金設定になっているだけでなく、超格安の「eSIM」プランも用意されるなど、きめ細かなニーズを満たすプラン展開も魅力だ。
しかも、eSIMプランに関しては、他社サービスとの併用ユーザーもいるとのことで、マニアックな活用事例が出てきているという。
<▲図:旧プランと新プラン「ギガプラン」の比較(税抜)> |
同社は今後も月に数万回線規模で純増すると想定しており、順調に行けば近日中にも110万回線を突破することになりそうだ。
携帯電話サービス市場では通信キャリアであるNTTドコモが「ahamo」、KDDI/沖縄セルラーが「povo」、ソフトバンクが「LINEMO」といったように、約3,000円で月間20GBの高速データ通信が可能な新プランを投入し、多くのユーザーを獲得しているが、依然として格安SIMサービスの価格帯の市場は残っている。実際には残っているというよりも、政府主導の値下げ要請によって通信キャリアが新プランを投入したことで格安SIM/スマホ市場も値下げせざるを得なくなり、結果として1,000円前後の価格帯で新たな市場を形成することになったと言う方が正しいか。通信キャリアでは楽天モバイルが格安SIMと完全に競合する料金プランを始めているため、同社も含めて今後どのような戦いになるのか分からないが、楽天モバイルの場合は自社回線インフラの整備が完全ではないというマイナス要素があるだけに、しばらくの間はその点がネックとして付きまとう。
また、IIJmioでは新プラン提供開始を記念し、5月末まで端末の特価セールキャンペーンを実施中で、このキャンペーンも純増に寄与しているものと考えられる。
格安SIM/スマホ市場ではオプテージの「mineo」やビッグローブの「BIGLOBEモバイル」らも一定規模のシェアを持ち、トップグループを追いかけているだけに、昔も今も競争の厳しい市場だが、IIJmioは新料金プラン戦争においても好スタートを切った印象だけに今後の更なる伸びが期待される。
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<編集後記>
返信削除IIJmioがひとまず好発進した感じで良かったですね。政府主導の値下げによって、下手をすると格安SIM市場は消滅しかねない、もしくはかなりの淘汰となりそうでしたし、実際小規模事業者は厳しいと思いますが、ひとまず上位陣は良いスタートを切った印象です。あとは利益を確保して、キャリア、格安SIMと、良い感じで全体的に市場が成長すればなによりですが、今年は注視すべき一年になりそうですね。