<▲図:楽天モバイルは当初計画を約5年も前倒し。基地局整備を加速させている> |
楽天モバイルは、NTTドコモ(以下、ドコモ)、KDDI/沖縄セルラー(au)、ソフトバンク(ワイモバイル含む)と比べて最も遅く携帯電話キャリアサービスに参入したため、当然ながら自社回線の基地局整備は遅れている。しかも、市場環境は激変し、悠長に構えていられる状況ではなくなった。
今春時点では同社の料金プランは月額2,980円、なおかつ300万人は1年間に渡って無料などのキャンペーンによって大きな注目を集めた。
しかし、今や先行他社がこぞって月額2,980円で月間データ通信量20GBのプランを出す状況。こうなってしまってはコストでの優位性を示しにくい上、後発なので通信インフラ整備の遅れも大きなネックとなってしまう。
そして楽天モバイルは、今月のドコモ、ソフトバンクによる月額2,980円の料金プランの発表を待つことなく、厳しくなる環境を想定してか、基地局整備計画を大幅に加速させることを11月の第3四半期決算説明会の段階で発表済みだった。
当初の計画では2026年夏に人口カバー率96%達成を目指していた同社だが、約5年前倒し、2021年夏にその目標値を目指す。そして、今年6月時点では月間の基地局展開数が750局だったペースを12月には倍の1,500局に引き上げることも明らかにしていた。
結果、今回発表された最新の資料によれば、12月時点での人口カバー率(月末までの見込みを含む)は73.8%に達するという。今年3月時点では23.4%だったので、非常に大きなエリアカバー拡大を達成していることが分かる。その後、順次整備を進め、前述したように来夏には96%に達する見込み。
実際のところ、楽天モバイルが今後、先行3社と競っていくには自社回線の整備を急ピッチで進めると共に、他社にはない端末ラインナップを揃えて製品面での魅力を訴えつつ、楽天グループ内の各種サービスとのシナジー・各種特典などの強化といった、考え得る限り全てを投入した状態へと一刻も早く進化させない限り、厳しい戦いが待ち受けているように見える。
楽天といえば、Amazon.co.jpと並び、国内の通販プラットフォームの最大手の一角なので、日頃から利用している方は筆者を含めて非常に多いと思う。それだけに魅力的な特典などがあれば、携帯電話が日本全国どこでも繋がってどこでも速いのなら、もしくは多少遅くとも、移行を検討する方は出てくるはずだ。
実際、少なくともここまでの契約申込数の推移は好調なようだ。
6月時点で100万件、9月時点で143万件、11月12日の決算説明会での発表時点で160万件、そして11月末時点で179万件と、順調に伸びている。
また、豪雨・台風・地震など様々な自然災害に見舞われる昨今だが、楽天モバイルは自然災害に強いネットワークを構築すべく、その対策の一環として、米AST社と連携して取り組む「スペースモバイル計画」にも着手している。
衛星通信ネットワークを非常時用に構築しようという計画で、日本全土の100%カバーも可能なインフラになるとされている。それこそ山岳地帯や無人島などでも通信できる。この衛星通信ネットワークがあれば、災害によって基地局が損壊しても一時的にカバーすることが可能となる。しかも、既存のスマートフォンで常時と同じように通信できることが非常に大きな魅力だ。別途、衛星通信専用の携帯電話端末を用意するような必要がない、ということになり、ユーザーからは基地局損壊などをインフラ状況を意識せずに普段通りスマートフォンを使える。
なお、スペースモバイル計画による衛星通信ネットワークの通信サービスは2022年第4四半期を目途に開始される予定だ。
やはり第4の通信キャリアである楽天モバイルが力を付けてこそ、先行3社に対して大きな刺激を与えられる存在になるはずなので、今後も楽天モバイルの回線インフラ強化、サービス強化などが期待される。
【情報元、参考リンク】
・楽天モバイル
・総務省/楽天モバイル提出資料(PDF)
・総務省/デジタル変革時代の電波政策懇談会(第2回)の開催