2017年が終わり、2018年を迎えてすでに4日が過ぎたが、ここで通信各社の年頭所感を紹介したい。いずれも原文のまま掲載するので、各社のユーザーはもちろん、今年、MNPでの乗り換えを検討している方、はたまた特にそういった予定はなくとも各社の今年の取り組みなどに関心がある方はチェックしてみてほしい。
2017年は10月よりLINEの「Clova WAVE」、Googleの「Google Home」、Amazonの「Amazon Echo」シリーズといった、AIエージェントを活用したスマートスピーカーがリリースされ、新しい分野が開拓された。もちろんスマートスピーカーとスマートフォンとの連携、各社の家電との連携にも注目で、2018年はこの点でのニュースや対応製品、対応アプリも増えるはず。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクらがこれらの分野にどのように力を入れていくのかが気になるところ。そして東京オリンピックが開催される2020年に向けて各社は次世代移動通信システム「5G」の商用サービスへの準備を今年はさらに本格化していく。2017年には、すでに各地で各種の実証実験が行われているが、2018年も準備は進む。
また、2017年はスマートフォンを使った「VR」の市場も伸びてきた。かくいう筆者もVRにハマった口だが、おそらく2018年は体験スペースもさらに増えるはずで、Googleが主導するVRプラットフォーム「Daydream」の普及も期待される。現時点ではスマートフォン向けVRプラットフォームで一通りのアプリが揃い、まともに実用できるレベルに達しているのはOculusと組んだ「Gear VR」のみだが、おそらくHTC、そしてDaydream対応陣営も2018年は大きく前進するはず。
そして、とても大きな市場に成長してきたSIMフリースマートフォンの市場にも注目だろう。
日本におけるSIMフリースマートフォン市場はASUSの「ZenFone 5」が大きく切り開いた市場だと思うが、当時、コストパフォーマンスに優れ、端末自体のパフォーマンスも良好な機種はASUSのZenFone 5しかなく、ZenFone 5はヒット商品になった。続く「ZenFone 2」も「性能怪獣」というキャッチコピーで売り出し、ヒット。ところが、ファーウェイがASUSの牙城を崩しにかかり、「P9」シリーズ、「honor」シリーズ、「Mate」シリーズなどで一気に日本のSIMフリー市場でもトップメーカーの一角へと成長。
現在は日本の富士通、シャープの端末も成熟してきて、SIMフリースマートフォン市場の機種ラインナップもかなり良くなってきた。
2018年はSIMフリースマートフォン市場にも注目だろう。
さらに楽天が第四の携帯電話会社を設立し、2019年度にも商用サービスを提供開始する予定とされている。こちらの動きも気になるところ。
前置きが長くなったが、各社の年頭所感を紹介したい。掲載順は五十音順。
《NTTドコモ》
年頭にあたって
株式会社NTTドコモ
代表取締役社長
吉澤 和弘
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年2017年は、2014年10月に発表した「中期目標」の全ての経営目標を1年前倒しで達成することができました。
4月には2020年のさらにその先にある未来を見据えて、ドコモがこれから何をすべきかを明確にした中期戦略2020「beyond宣言」を発表しました。発表以降、「beyond宣言」の実現に向け、取り組みを続々と開始することができ、着実なスタートが切れた1年でした。
2017年度の業績についても、年間業績予想に対して順調に進捗しています。
現在、「デジタルトランスフォーメーション」のうねりの中にあって、ドコモは先頭に立って、お客さま、そして世の中に「新しい価値」を実現、提供し続けていくことが大きなミッションであります。そのような中、いよいよ2018年がはじまります。
私は、2018年を「beyond宣言の成果を続々とお客さまにお届けする年」にしたいと考えています。また、「事業基盤の変革がスタートする重要な年」であると位置づけています。
「会員基盤」を軸とした新たな事業基盤の構築により、「デジタルマーケティング」や「AIエージェント」を活用して、お客さま一人ひとりを理解し、絆をさらに深め、お客さまに一歩進んだ「お得・便利」をお届けします。また、オープンなビジネスプラットフォームにより、パートナーの商流拡大を推進します。
「beyond宣言」の実現をより確かなものにするために、お客さま向けには次の3点を推進します。
一つ目、継続的なお客さま還元、一人ひとりに寄り添った「お得・便利」の提供の実現、二つ目、最先端のテクノロジーを活用した、お客さまや世の中の様々なスタイルの革新、三つ目、あらゆるお客さま接点を連携させた、安心、快適なご利用のサポートであります。
春には、AIエージェントの本格サービスの提供も始まります。これからもサービスをさらに進化させ、ドコモがめざす「生活に溶け込んだ究極のパーソナルエージェント」の実現をめざします。また、スマートフォンの普及率は6割を超えています。さらにシフトを加速するために、今月から「ドコモスマホ教室」を拡充します。
そして、パートナー向けには次の3点を推進します。
一つ目、5G時代の新たな利用シーンの創造をめざした「5Gトライアルサイト」のさらなる拡大、5G時代を先導するNWの高度化、二つ目、AI・IoT・ドローン等の先進技術を活用した社会的課題や地方創生に向けたソリューション協創、三つ目、「+d」による協創のさらなる拡大であります。
4月からは、マツモトキヨシホールディングスさまとの「+d」による新たなマーケティング施策も始まり「dポイント」の利便性向上や提携企業の商流拡大へ貢献します。IoTの分野では、コマツさまらと設立した「LANDLOG」のビジネスも本格化させ、パートナーとの産業創出やソリューションの協創を推進します。
今年も「beyond宣言」を続々と実行・推進することにより、「お客さまサービスの向上」と「企業の持続的発展」に向けて全力で取り組みます。また、東京2020オリンピック・パラリンピックまであと2年余りとなります。全社一丸となって、しっかり準備を進めます。
2018年が、皆さんにとって、素晴らしい1年となりますよう祈念して年頭の挨拶といたします。
《KDDI》
■2018年 KDDI年頭挨拶
KDDI株式会社 代表取締役社長 田中孝司
●2018年のテーマ
“変革”に挑み続ける1年にしよう
●2018年のポイント
-お客さま第一に考える
-新たな成長に向け、この1年をやり切る
-「ジブンゴト化」と「スピードアップ」
●挨拶
KDDIグループの全社員の皆さん、明けましておめでとうございます。
年末年始に、お客さま対応や、設備の保守運用などでご出勤された皆さん、心から感謝いたします。
それでは、2018年の年頭にあたり、一言、私からご挨拶を申し上げます。
<2017年を振り返る>
2017年は、通信やその周辺事業を取り巻く環境だけではなく、
社会全体が大きな変革期を迎えたことを実感する年でした。
AI、ビッグデータ、IoTやロボットなどの新たな技術を活用した動きが、
金融、製造業、医療や漁業・農業など、あらゆる産業分野でますます話題になっています。
通信業界においては、MVNOとの競争が激化した1年でした。
さらに今後は、通信事業者間の競争というだけでなく、周辺領域への拡大で全体の成長を図るという、
通信とライフデザイン事業などを融合した経済圏としての競争が、本格化してくると予想されます。
われわれの昨年の活動を振り返ってみると、現中期計画の2年目として、
「中期計画の実現に向け、変革を加速する」という会社方針を掲げました。
国内通信事業においては、お客さま体験価値の向上に注力し、
三太郎の日やauスマートパスプレミアムの提供開始、新料金(ピタット、フラットプラン)の導入を行いました。
ショッピングモール「Wowma」や「au Home」の提供開始、
イーオンホールディングスと連携した教育事業への参入準備など
ライフデザイン企業への変革に注力するとともに、
ソラコムやアイレットとの連携など、IoTやクラウド事業の取り組みなども積極的に進めました。
グローバルでは、ミャンマーやモビコムでのLTEサービスの本格展開により、
快適なサービス環境の整備をしています。
技術部門では、エリアのさらなる拡大に加え、VoLTE切断率の改善などの
ネットワーク品質の向上に日々取り組んでいます。
しかしながら、このような取り組みは競争力を維持するに十分なレベルに到っているでしょうか。
他社も凄まじい速さで変革し続けているはずです。
われわれの変革のスピードはまだまだ足りないと感じています。
現状に満足することなく、変革に挑み続けなければ、成長企業として存続できないということを認識し、
2018年に臨みたいと思います。
<2018年について>
現中期計画を完遂し、ライフデザイン企業の基盤を築く
2018年は、現中期計画の最終年度です。
「国内通信事業の持続的成長」「au経済圏の最大化」「グローバル事業の積極展開」という
3つの事業戦略の下で、これまで取り組んできたことを集大成し、
2019年から始まる次の中期計画へとつなげていく大変重要な1年です。
2018年がスタートするにあたり、今年1年皆さんに心構えとして実行してほしいことを、3点申し上げます。
1つめは、常に「お客さま第一に考える」ということです。
われわれは、「お客さま視点」と「変革」をキーワードに、「お客さま体験価値(CX)」を提供する
ビジネスへの変革を進めていますが、まだまだ道半ばです。
お客さまの視点に立ち、CXをさらに高めるよう努めてください。
お客さまの日々の変化も逃さないよう、常に「お客さま第一に考える」ことが必要です。
これが、お客さまに選び続けていただける存在となり、
新しい価値を提供できる企業になるための基本であることを改めて認識してください。
2つめは、「新たな成長に向け、この1年をやり切る」ということです。
4月から始まる2018年度は、現中期計画の最終年度として、営業利益のCAGR7%、
au経済圏流通総額2兆円超が必達目標です。
au事業においては、新料金プランの効果などで解約率も減少傾向が見られるようになりましたが、
新料金プランの認知度をさらに高め、これから本格化する学割シーズンにおいて、
お客さまに新料金プランをお選び頂けるよう全力で取り組んでください。
ソリューションにおいては、解約抑止によりID純増を必達するとともに、
IoT等のビジネス戦略を推進することが必要です。
また、今後の成長軸として、au経済圏の一層の拡大や、
ミャンマー、モンゴルでのネットワーク品質、CS、サービスなどの競争力の強化を図ってください。
ネットワークは、未来に向けた高品質なネットワークを構築する戦略を明確にし実行する、
つまり次のビジネス基盤となる5GやLPWAの技術戦略の策定を進めることが必要です。
合わせて、全社を挙げてコスト削減に取り組み、「筋肉質な体質」に変わる必要があります。
業務や仕組みをゼロから見直す意識を強くもって進めてください。
新たな成長ステージに向け、この1年、各部門においてやるべきことを、
強い意志によりやり切ってほしいと思います。
3つめは、「ジブンゴト化」と「スピードアップ」です。
われわれが、業種を超えた、より厳しい競争環境の中で、これからも成長し続ける企業であるためには、
皆さん一人ひとりが、自立し、自ら変革を実行していくことが必要です。
また、いままで以上に「スピードアップ」して課題に対処していかなければ、
成長はおろか、淘汰されていきます。
いま一度、「ジブンゴト化」と「スピードアップ」を強く意識してほしいと思います。
昨年度からは、「働き方変革」も進めています。業務プロセスの改善などで時間を創出し、
自己啓発や社外の方との交流を通じて視野を広げ、人間力のアップにもつなげてください。
そうすることで、新たなチャレンジをし続ける力を蓄えて欲しいと思います。
<最後に>
最後になりましたが、KDDIグループの競争力の源泉は、一人ひとりの社員の皆さんです。
会社としても皆さんの心身の健康促進をサポートしていきますが、
皆さん自身も健康に留意するとともに、ぜひ、失敗を恐れず、新しい領域へ果敢にチャレンジしてください。
明るい未来を目指して、会社も個人も変革に挑み続け、競争環境を勝ち抜いていきたいと思います。
それでは、今年1年、KDDIグループ全社員の皆さんとご家族のご健康とご多幸を祈念いたしまして、
私の新年のあいさつとさせていただきます。
以 上
《ソフトバンク》
年頭所感
2018年1月4日
ソフトバンクグループ 代表 孫 正義
あけましておめでとうございます。
今、世界中でテクノロジーによる社会、産業、ライフスタイルの変革が起こっています。PCやスマートフォン以外にも、多種多様なデバイスが次々に生まれ、全てのものがインターネットにつながるようになり、爆発的にデータが増え続けています。そして、これら膨大なデータを伝達処理するマイクロプロセッサーの性能や通信速度が加速度的に向上していくと、いずれは、人間の脳の働きを超えていく「超知性」が誕生する世界、シンギュラリティーが到来することになるでしょう。このような世界では、社会や産業のあらゆる分野が再定義され、ビジネスのあり方やライフスタイルを根幹から変え、新しい事業の機会が創出されると考えています。
ソフトバンクグループでは、このような来るべき未来と社会へ貢献するための事業の構えはどうあるべきかを常に考えてきました。昨年は、その一つの解として「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を立ち上げました。投資先は、通信インフラやサービスだけでなく、ロボティクス、ライドシェア、自動運転、バイオメディカル、金融、保険、農業など多岐にわたっています。既存の社会構造、産業分野を超えて全てのものがつながっていく世界において、次世代のインフラとなりえるプラットフォームやビジネスモデルを持つ企業ばかりです。こうした投資先企業と、世界各地で半導体、通信、インターネット事業を展開する当社グループの主要事業がより密接にコラボレーションしていくことで、さまざまな化学反応を起こし、新しい価値を提案し、世界中で起こっている変革をさらに推し進めることができると考えています。
テクノロジーの進化によって引き起こされる変革やイノベーションは、今年もさらに加速していくことでしょう。私たちソフトバンクグループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を胸に、いかに未来へ貢献できるのかを常に考え、挑戦し続けていきたいと思います。
今年もソフトバンクグループをどうぞよろしくお願いいたします。
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