<▲図:SIMロックフリースマホでも対応機種が増える「VoLTE」(画像はNTTドコモのVoLTEロゴ)> |
最近、SIMロックフリースマートフォンでも「VoLTE」(ボルテ)対応機種が増えています。このVoLTE、大手通信キャリアで商用サービスが始まってからしばらく経ちますが、まだ良くわからないという方もいると思います。一体何なのでしょうか? 今回はVoLTEをおさらいしたいと思います!
■そもそも「LTE」は“データ通信専用”の規格(おさらい)
<▲図:元々は「3Gと4G」の橋渡しだったLTE(ドコモテクニカルジャーナルより引用)> |
2年ちょっとまえのスマホ講座(こちらのページ)のおさらいですが、「LTE」という通信規格は「Long-Term Evolution」、つまり「長期間の革新(進化)」を意図して作られたものです。そのため、データ通信に的を絞って進化をさせることにして、音声通話は当面の間は従来の規格(GSMまたはW-CDMA/CDMA2000)を使うようにしました。
<▲図:CSフォールバックの概要(ドコモテクニカルジャーナルより引用)> |
そのため、LTE対応スマートフォンには、音声着信があると従来規格に通信を切り替える「CS(回線交換)フォールバック」という機能が付いています。普段はLTE通信で待ち受けて、音声通話の呼び出しが通知されると従来の通信規格に切り替えて着信を行い、通話が終わると再びLTE通信に戻すという仕組みです。
しかし、CSフォールバックでは、以下のような問題点があります。
- LTE以外の通信に対応していないエリアでは着信そのものができない恐れがある
- W-CDMA規格では「マルチアクセス」でデータ通信を継続できるが、原則として速度が落ちる
- GSM/CDMA2000規格にフォールバックした場合は通話中にデータ通信ができない
国内の通信事業者では特に、au(KDDIと沖縄セルラー電話)の場合は通話中にモバイルデータ通信ができないという大きな問題点がありました。また、その他の2社も通話中にデータ通信速度が落ち込むという問題が生じてしまいます。
■「VoLTE」は音声通話を「データ」として流す
<▲図:VoLTEのベースとなるIP電話の仕組みの概略図(沖電気の「IP電話普及推進センタ」資料から引用)> |
問題を解決するためには、通話音声をデータ化して伝送してしまえば良いのです。
幸い、インターネットの世界にはすでに「VoIP(Voice Over IP:IP電話)」という、音声通話をデータ通信の枠組みの中で行う仕組みがあります。この仕組みをLTE通信機器で使うべくアレンジしたものが、「VoLTE(Voice Over LTE)」なのです。
VoLTEは携帯電話ネットワークの世界標準を決める「GSMA(GSM Assosiation)」によって標準化(こちらのページ参照)されており、世界中の通信事業者も対応を進めているところです。
<▲図:固定電話以上の音質を確保できる> |
VoLTEの大きなメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- CSフォールバックしなくても良いので、LTEの高速通信を維持できる
- CSフォールバックしなくて済む分、電話の発着信速度が向上する
- 従来の回線交換式の音声通話よりも高音質にできる(HD通話/HD+通話)
日本では2014年6月にNTTドコモが他社に先駆けて導入し、次いで同年12月にauとソフトバンクも導入しました。特にauは国内3G(CDMA 1X)の巻き取り姿勢を加速する手段としてVoLTEを利用しており、VoLTE対応端末をあえて国内の3Gに“非対応”とする徹底ぶりです。
VoLTEそのものよりも遅れましたが、VoLTEの国際ローミング手順についてもGSMAで規格化されており、現在では海外ローミング中でも同じ通信事業者同士であればVoLTE通話ができるようになりました。しかし、国内外を問わず、事業者を超えたVoLTE通話は未だに実現していません。今後の課題です。
ということで、VoLTEの解説をしてみました。参考になれば幸いです。
記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue
静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。
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本コラムは毎月第1・第3日曜日更新予定!
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