<▲図:SIMフリー市場向けの新モデル「arrows M04」> |
売却先候補とみられるのはポラリス・キャピタル・グループ、英CVCキャピタル・パートナーズといった投資ファンドのほか、中国メーカーのファーウェイ、レノボ、台湾のEMS大手でありシャープも傘下に抱える鴻海精密工業ら。
ただし、富士通は22日、日本経済新聞の報道を受けて次のコメントを発表している。
「本日、日本経済新聞において当社携帯端末事業の売却に関する報道がありましたが、当社が発表したものではありません。2016年2月に分社化しました携帯端末事業につきましては、他社とのアライアンスを含め様々な可能性を検討しておりますが、決定しているものはありません。今後開示すべき事実が発生した場合には、速やかに公表いたします」
日本経済新聞は、富士通が携帯電話事業を売却したとしても、売却対象となる携帯電話事業会社の株式の一部は保有する方針だとしており、完全に手放すわけではないようだ。さらに、自社ブランドも続ける意向とのことで「arrows」ブランドは継続提供されることになりそうだ。
富士通の国内での携帯電話シェアは5位。スマートフォンの販売台数は今年度は310万台との見通しと報じられている。
非常に残念なニュースで、富士通が携帯電話事業を売却するとコンシューマー向けのスマートフォンを手掛ける国内メーカーはソニー、京セラの2社になってしまう。シャープも今や鴻海精密工業に買収され、国内の大手通信事業者に端末を供給する国内メーカーはソニーと京セラだけになってしまう。
残念なのは今やarrowsは悪くない機種に成長しているにも関わらず、販売台数がピーク時の半分以下になってしまっていることだ。ピークは2011年度で約800万台。一昔前の「ARROWS」(昔は大文字だったが今は小文字)には「爆熱」モデルと表現されることもある機種もあったり、基本パフォーマンスも決して良くなかったりと、微妙な機種が続いていたが、それも昔のこと。
今のarrowsは仕上がりも良くなっており、パフォーマンスも改善されている。SIMフリー市場に投入している「arrows M」シリーズも同様に良い。
また、NTTドコモ向けの「らくらくスマートフォン」シリーズも独自の魅力を備え、決して悪くない機種だ。
しかし、日本市場は世界市場と比べても独特のメーカー構成になっていて、米Appleが非常に強い。グローバルではAndroidプラットフォームが圧倒的だが、日本市場ではiPhoneが4割以上のシェアを持つ。それでも残りはほぼAndroidなので、Androidスマートフォンの市場も十分に大きいが、富士通は5位と苦戦。arrows Mシリーズを投入するSIMフリー市場では台湾ASUSや中国ファーウェイが台頭し、シャープ共々苦戦中。
とはいえ、悪くない機種を作っているとはいえ、凄く良いかと言われると微妙なことも確か。
同じく海外メーカー勢に苦戦中のシャープは今夏「AQUOS R」を3キャリアに投入しているが、ハイスペックかつ非常に良い仕上がりで高評価で健闘している。arrowsには今、そこまでの機種はないので、厳しい状況であるのも致し方ないのかもしれない。
それでも何とか国内メーカーとして生き残って欲しいところだ。
【情報元、参考リンク】
・富士通/プレスリリース(PDF)
・日本経済新聞