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【せう先生のスマホ講座】第43回:使ったら法律違反の可能性!? 海外からスマホを買う前に気を付けたいこと

GAPSISをご覧の皆様、「せう」です。こんにちは。体調を崩してしまい、スマホ講座(恐らく)史上初の休載をしてしまいました……。楽しみにしていた方、申し訳ありませんでした。今は(たぶん)すっかり元気です。

<▲図:海外土産にスマホ。でもちょっと待って!(写真は深センの家電量販店)>

それはさておき、この原稿は主に香港で書いています。実は、今香港に旅行に来ておりまして。何事もなければ、この記事が載る頃には帰国しているはずです。

で、香港と言えば、「SIMロックフリー天国」と言われていて、携帯電話にSIMロックをかけること自体が“禁止”されています。そのため、通信キャリア(オペレーター)経由で販売されている端末も含め、全てSIMロックフリーなのです。

国内未発売端末も少なくなく、日本への「お土産」としてスマホを買って帰る……のはいいのですが、そのお土産を日本で使ったら罰せられる可能性があるのを皆さんご存知でしょうか?


■日本国内で電波を発する機器は「技適など」が必要

<▲図:「CEマーク」と「FCCマーク」>

携帯電話が使う電波は、限りのある資源です。そのため、各国の通信を担当する当局が管理しています。当然、電波を送受信する機器についても規制を受けます。例えば、EU加盟国・トルコ・スイスで販売される機器には「CEマーク」の取得を求められますし、アメリカ・カナダでは「FCC(アメリカ連邦通信委員会)」の認証を通過することが求められます(FCC認定機器は、マークなしで認定IDのみを表示する場合もある)。

<▲図:国内大手キャリアの端末はCEマークとFCC認証を通過している>

これらの国・地域で販売するものでなくても、当該地域で合法的に通信するには、これらの認証をしっかりと取得することが必要です。事実、大手キャリアの端末で国際ローミングに対応している機種はCEマークとFCC認証の両方を通過しています。

<▲図:「技適など」を取得した機器に付けられる「技適マーク」>

「日本ではどうなのか」というと、総務省が電波行政を担当しており、日本国内で電波を利用する機器は電波法に基づく「技術基準適合証明」を取得しなければなりません。また、携帯電話など通信回線と接続するものは電気通信事業法にもとづく「技術基準適合認定」を受けないといけません。これらはまとめて「技適等」と呼ばれていて、証明・認定を受けた機器は共通の「技適マーク」(上画像)を証明・認定番号とともに表示する義務があります。表示スタイルは、機器の見やすい場所への直接印字またはラベル貼り付け、あるいは画面上に表示する「電磁的表示」(2010年の総務省令改正以降に証明・認定を受けた機器)を選択することができます。

海外で販売されている携帯電話でも、日本国内において通信するには技適等の証明・認定を受けた上で技適マーク(と証明・認証番号)を表示する必要があります。要するに、海外で買った携帯電話で、技適マークを表示できないものは国内で使った瞬間に違法なのです。

「表示できればいいでしょ……」と言って、技適マーク(と証明・認証番号)を勝手に印字して貼り付ける行為は、完全に違法行為で、刑事罰の対象です(※)。また、「電波を発しなければ……」と、フライトモードで使うことも、実はグレーゾーン状態です。法的リスクを考えるなら、技適等を取得していない携帯電話を日本国内で使ってはいけないのです。

※技適等の表示は、製造元(または輸入販売元)が行います。これは、改変・修正を行う場合も同様です。


ここ約1年では、UPQの「UPQ Phone A01」や、FiiOの「FiiO X7」(輸入販売元:小柳出電気商会)が技適などを取得しない(し忘れた)まま国内販売をした問題が最近ありました。両端末ともに未取得時に販売してしまった分は全量回収し、取得後に正しい技適等の証明・認証番号のシールを貼り付けて再出荷という対応をしていますが、これも法律に従った措置です。

技適マークを「電磁的表示」できるようにした背景の1つには、ソフトウェア更新で技適等の誤りや届出事項に変更があった際に、改変・修正をしやすくするという点があります。


■例外規定もあるが適用条件がややこしいので要注意

<▲図:技適マークの例外規定もあるが……>

上記の規定があると、海外から訪れた訪日外国人や一時帰国した海外在住の日本人は普段使っている携帯電話を使えない可能性があり、非常に困ってしまいます。そこで、訪日外国人や一時帰国者には、一定条件を満たすと技適等を取得していない携帯電話を使える例外規定が設けられています。具体的には、以下のような例外が設けられています
  • 「CEマーク」や「FCC認定」を取得した携帯電話で、日本の通信事業者に国際ローミングする場合は、技適等を取っていると見なしてモバイル通信可
  • 「CEマーク」や「FCC認定」を取得した無線LAN対応機器で、Wi-Fi Allianceの「Wi-Fi Certified」認証も取得している機器は、日本入国から90日以内に限り技適等を取得していなくても通信可
  • Bluetooth SIGによる認証に通過しているBluetooth機器は、日本入国から90日以内に限り技適等を取得していなくても通信可

要するに、先に述べたCEマークやFCC認定を取ったスマホであれば国内で使えるように見えるのですが、注意しないといけないことがいくつかあります。

まず、携帯電話としての通信機能と、それ以外の通信機能(無線LAN、Bluetooth)で扱いが異なることです。

携帯電話のモバイル通信は、国際ローミングであれば利用日数の制限がないのに対し、無線LANとBluetoothについては入国から90日という日数制限があるのです。そのため、入国してから91日目以降は、持ち込んだ海外端末で無線LAN・Bluetoothを利用することは無条件で違法となります。

次に、いずれの規定も海外から利用者本人が持ち込んだ場合を前提としていることにも注意が必要です。要するに、海外から輸入したり国内のショップから購入したりした海外端末には適用できないのです。これらの規定をしっかり適用したい場合は、面倒でも自らと一緒に端末が輸入される必要があります。

何より、これらの規定は日本に住んでいる日本人を本質的に想定していないことは念頭に置かないといけません。なので、「国際ローミングを使えば大丈夫」とかを含めて、グレーゾーン(適法とも違法とも言いきれない面がある)なのです。

ですから、日本に住んでいる日本人の皆さんにおかれましては、端末を海外土産、あるいは輸入する場合は技適等を取っているかどうかを確認することを強くお勧めする次第です。


記事執筆者プロフィール
せう
ブログ:せうの日記、Twitter:@shoinoue

静岡県三島市で産まれ、静岡県駿東郡長泉町で生まれ育ったアメリカ系日本人3世。見た目が日本人離れしている反動で、身の回りの道具は日本で開発されたものだらけである。ITmedia、andronaviを始めとするWeb媒体を中心に執筆活動を展開。自前のブログ「せうの日記」も宜しくお願いします。

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