最近、長い間下落を続けていたシャープの株価の下落傾向がとまり、やや上昇に転じる気配も見える。この動きの原因があるとすれば、それはクアルコムのシャープに対する出資の決定だろう。世界的に大きなシェアを持つクアルコムがシャープを信頼して出資するというのは、シャープに未来があるということを世の中に信じさせる重要なポイントとなったようだ。
IGZOは極めて省電力 |
クアルコムがシャープに出資する条件はシャープのプレスリリース(こちらのページ)に詳しいが、要するにクアルコムの技術であるMEMSディスプレイ技術とシャープのIGZO(イグゾー)の技術を組み合わせた次世代ディスプレイを共同開発するということだ。そして、この開発はシャープ米子工場で行うとある。
ちなみにMEMSはクアルコムの子会社であるPixtronicsの技術で、バックライトにRGBのLEDを使い、シャッターの開閉で色を調節するという独特の技術だ。光の利用効率が液晶の約10倍程度と優れており、極めて省電力ながら、しかも発色もいいという技術だ。
クアルコムとしては、このような省電力ディスプレイはスマートフォンやタブレット向けのCPUをサプライするビジネスとの連携で大きな意味を持っているのは言うまでもない。
■ハイスペックスマートフォンのボトルネック
最近のハイパフォーマンスなスマートフォンにとって、大きな課題となっていたのはバッテリー消費の問題だ。高速CPU、LTEのような高速通信、高解像度ディスプレイをドライブするにはより大きな電力が必要だ。ボディサイズの大きさから比較的楽に大容量バッテリーを搭載できるタブレットと異なり、スマートフォンにはある程度使いやすいサイズと重量というものがあり、バッテリーに避けるスペース、そして搭載できる容量にも限界がある。
省電力化ができなければ、それがボトルネックとなり、将来的にスマートフォンの高速化や大画面化なども難しくなり、行き詰ってしまう可能性もある。ディスプレイの省電力化がスマートフォンの未来の大きなキーとなりうるのだ。
■IGZO液晶は「今、手にできる未来」?
さて、MEMS技術と組み合わせた次世代ディスプレイ以前に、現在のIGZOディスプレイ自体、通常の液晶ディスプレイに対して、あまり動きのない表示であれば約3~5倍も省電力であり、大きくバッテリーを節約できる。しかも、表示の明度が高く、明るいのである。
将来の次世代ディスプレイも楽しみだが、NTTドコモのスマートフォン「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」もIGZO液晶搭載に加え、クアッドコアCPU搭載、全部入り、となかなかのポテンシャルを持っている。ある意味「今、手にできる未来」と言えるかも知れない。このIGZO技術がシャープの再建に役立つことを祈りたい。
IGZO液晶を搭載する「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」 |
斜めから見ても発色がいい。
記事執筆者プロフィール
一条真人
ITジャーナリスト
Twitter:@ichijomasahjito、Facebook:masahito.ichijo、
ブログ:一条真人メモ
クラウドサービスからスマートデバイス、デジタルAVまで、デジタル関連のアイテムが大好き。「ハッカー」(日本文芸社)、「PCプラスワン」(笠倉出版)などパソコン雑誌の編集長を経て、小説なども出版して現在にいたっています。PC、IT関連の本は50冊以上書かせてもらいました。スマートフォンは初代Xperia(あまりに美しいデザイン!)、iPhoneなど数機種使っています。
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本コラムは毎月第2・第4火曜日更新予定!
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