日本通信は22日、携帯キャリアの過度なMNPインセンティブに対して公開抗議を行った。抗議の一環として、同社は音声付きSIMサービスの全てにおいて1年間の最低利用期間を設定し、期間未満で解約したユーザーには10,500円の違約金を設定した。違約金に関してはこちらの記事を参照してほしい。
本記事では、同社の公開抗議の詳細をお伝えしたい。
日本通信は公開抗議文書の中で、1年間の最低利用期間を設定するに至った背景を次のように説明している。
「携帯キャリアは、事業者間競争が激化する中、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)による転入に対して、キャリアショップ等と連携して1回線あたり3万円から7万円程度のキャッシュバックを支払っています。一方、当社は、音声付きSIMサービスの中に、最低利用期間がないものを設けています。
ところが、この状況を利用することにより、最低利用期間がない当社のSIMを申し込み、直後にMNPで携帯キャリアに移動し、それを即座に解約することで、1回線あたり数万円のキャッシュを手に入れることができてしまいます」
この問題は日本通信のみならず、過度なMNPインセンティブを導入している携帯キャリアの一部サービスに対しても起きているもので、ソフトバンクモバイルとKDDIはプリペイドサービスの提供条件の見直しを行った。日本通信のサービスと同様、プリペイドサービスもMNPの転出側として利用される例があるからだ。しかし、ソフトバンクモバイル、KDDIと日本通信では立場に大きな違いがある。
前2社で損害を受けているのはプリペイドサービスのみであり、前2社にはMNPでの転入もある。プリペイドを利用して他社へ転出される例もあれば、その逆もあることになる。だが、日本通信の場合はMNPを利用した転出元として利用されることが多い。
とはいえ、日本通信は最低利用期間の定めのないSIMについても、ルールに則った契約事務手数料、通信料、及びMNP手続き手数料を取っているため、短期間でのMNP転出があっても経営的な問題にはならないとしている。
それでも、同社は今後もMVNO事業モデルによって成長戦略を推進していく企業として、このような通信業界の問題について適切に問題提起し、解決を訴えたいという。
同社はこの問題提起により、携帯キャリアが自律性を発揮することと、総務省が事後規制として何らかの対策を取ることを期待すると抗議文書を結んでいる。
なお、違約金の設定は一時的な措置とされている。ただし、期間については言及されていない。MNPによる転出元としての利用を考えていないユーザーにとっては、余計な違約金の設定となってしまうため、迷惑な話でもある。
実際には様々な点から多角的に見なければならない案件ではあるが、ともかく将来的にどのような変化が見られるのか、他社の動きを含めて注目となるだろう。
また、端末購入に関する話としては、本来は長く愛用しているユーザーにこそ、おトクな割引特典を付けてほしいと思っている方が多いはずだ。普通に機種変更するよりも、他回線を一旦契約し、MNPで入手する方が圧倒的に安く購入できる状態は健全とはいえないだろう。
【情報元、参考リンク】
日本通信/プレスリリース
GAPSIS/日本通信、MNP悪用対策として1年未満での解約に1万500円の違約金を設定へ
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