Google Musicのサービスは、先行する米AppleのiTunes Storeとどうしても比較してしまう。しかし、両者にとっての注目すべき違いは、音楽配信ストアとしての基本的な機能ではなく、新サービスである「Artist Hub」の存在にある。
Googleは、Google Musicにおける楽曲提供者、販売者の対象をレーベルのみならず一般人にまで広げた。Artist Hubでは、初期手数料25ドルを支払うことで、誰でも自分のページを持て、自作の楽曲を販売することができる。Android Marketで一般の開発者が自作アプリを手軽に登録・販売できることと同じ環境がアーティストにも提供されることになる。
これまでであれば、レーベルに所属していないアーティストが広範に楽曲を販売することは難しく、プロモーションもままならない。しかし、Artist Hub、そしてGoogleが運営する動画共有・配信サービス「YouTube」やSNS「Google+」またはTwitterやFacebookなどと連携すればプロのアーティストでなくとも自作の楽曲を多数販売することが可能になるかもしれない。
Artist Hubを利用して販売できる楽曲数には制限がなく、また販売価格も登録ユーザー自身が決定できる。ただし、売上の30%はGoogleの取り分となり、70%が登録ユーザーに支払われる。登録者が必要な経費は、初期手数料の25ドルのみで、その後の維持費などは不要。
レーベルとの契約、プロを目指しているアマチュアのアーティストや趣味で音楽を嗜む方などにも、自作の楽曲を手軽に販売できる場が登場することは非常に注目すべきことであり、かつそれを提供するのがGoogleである点が大きな意味を持つ。今ではAndroidスマートフォンは世界各国で多くのユーザーに利用されており、今後も普及が進むことは確実。また、YouTubeもNo.1動画配信サイトのポジションを確固たるものとしている。
また、Google+を利用すれば、友人に対して自分が購入した楽曲をフルサイズ視聴(1回限り)させることもできる。SNSによって楽曲の人気に火が付く土壌ができつつある。
そしてArtist Hubを利用するのは必ずしもアマチュアだけとは限らない。売上の70%というシェア率はプロにとっても魅力的なはずであり、すでに多くのファンを抱えるアーティストであれば、レーベルを通して販売するよりも大きな収入を得られる可能性がある。特に将来的にCD販売が完全に廃れ、Google MusicやiTunes Storeなどによる販売に集約される世界が訪れた場合には、楽曲販売収益に関しては実際にそうなる可能性が出てくる。
もちろんアーティストの収入源は楽曲販売のみならず、公演など多岐に渡るため、依然としてレーベルに所属するメリットは非常に大きいはずだが、書籍の分野においても出版社を介さずに作家自らが直接電子書籍マーケットで販売する事例も増えており、その動きが音楽業界でも生じる可能性は考えられる。
それだけにArtist Hubの登場と、今後の動きには注目が集まる。
ただし、残念なことにArtist Hubの登録は現在のところ米国在住者に限定されているので、グローバル展開が待たれる。
【情報元、参考リンク】
Official Google Blog/Google Music is open for business
GAPSIS/Google、音楽配信サービス「Google Music」を正式提供開始。1300万曲を揃える。一般の方も自作の楽曲販売が可能