今回、同社は公式ブログの中でNRCとケンブリッジ大学が協力して取り組んでいる研究テーマの中から3つの技術をピックアップして紹介した。「ナノワイヤ・センシング」と「ストレッチャブル・エレクトロニック・スキン(伸縮可能な電子皮膚)」、そして「エレクトロタクティル・エクスペリエンス(電気触覚体験)」だ。本記事ではこの内、ストレッチャブル・エレクトロニック・スキンについて紹介したい。
とはいえ、具体的な話に入る前に、まずはフレキシブル製品に関することから始めたい。
近年、ディスプレイの分野などでは折り曲げ可能なフレキシブル・タイプに関する技術が注目を集めている。特に電子ペーパーや有機ELディスプレイなどでは折り曲げ可能で非常に薄いパネルの研究成果発表などの話題を多く聞く。当然、将来的にはこのようなフレキシブル・ディスプレイが実際に我々一般消費者が手にする製品に浸透してくるはずだ。しかし、フレキシブルといっても万能ではない。例えば引っ張ったり、縮めたり、グシャグシャに丸めたり、といったことまではできない。
そこで、フレキシブル能力よりも一歩進んだ技術であるストレッチャブル・エレクトロニクスの分野に関する研究も進められている。これは日本語で言えば、伸縮性エレクトロニクスになるが、折り曲げは当然として、伸縮も可能なものになる。伸縮が可能ということは、自由曲面に貼ることができるわけだ。人の腕に巻きつけたり、服に貼り付けたりといったことが自由にできる。携帯電話に限らず、何に使おうか、と時間を掛けて悩み続けられるほど想定される用途は多い。有機ELディスプレイでいえば、すでに昨年、東京大学大学院工学系研究科電気電子工学専攻の染谷隆夫教授がその成果を発表している。
いずれは一般消費者の手にこのような技術が採用された商品が下りてくるだろう。
しかし、情報通信機器を完全に伸縮可能なものにするにはディスプレイだけでは足りない。筐体はもちろんとして、入力装置であるタッチパッドなども対応する必要がある。今回Nokiaの公式ブログで紹介された技術がまさにそれに当たる。同社のNRC、ケンブリッジ大学の研究チームは、伸縮可能な電子皮膚の技術を使い、圧力を感知する電子タッチパッドを開発した。このタッチパッドはゴムバンドのように伸び縮み可能で、最大20%の伸縮範囲内で正常動作する。下の動画をご覧頂ければわかるが、手の甲に乗せても、指に巻きつけてもいい。ある程度グシャグシャにしても、20%の伸縮範囲であれば問題なく使える。
実際はこのような伸縮性技術は携帯電話端末などよりも別の分野での利用が期待されている。Nokiaはあくまでも電気通信機器メーカーなので関係ないが、ロボットの手や腕に電子皮膚を搭載すれば、非常に繊細な反応を返せることは容易に想像できる。また、自動車などの乗り物、人間が操作する工業製品など、とにかく繊細な感触を得た後にフィードバックを返す必要がある、もしくはそうできた方が利便性の高まる製品での採用が注目されている。とにかく何にでも利用できる。
今回のNokiaのブログ記事では細かい技術的な話までは紹介されていなかったが、ワクワクするテーマであることは確か。将来こういった技術がどのように情報通信機器に反映されていくのか、楽しみでならない。
下のリンク先では、ナノワイヤ・センシングと電子触覚に関する話も載っているので、関心のある方はチェックしてみて欲しい。
【情報元、参考リンク】
The Official Nokia Blog/Beyond Morph a visit to Nokia Research Center Cambridge