このシステムを利用することで具体的に将来の携帯電話端末の利用にどのような変化が起きるのか考えてみよう。先にも述べたように、充電用のケーブルが必要なくなる。
例えばデスク上に送電用のモジュールが搭載された台を置く。充電したい端末には受電用のモジュールを取り付ける。モジュールが内蔵された端末の場合は取り付けの必要すらない。後は台の上に適当に端末を置けば充電される。しかも、充電可能な端末の台数は1台に限られない。複数台を同時に充電することができる。また、位置の自由度が高い為、ワイヤレス送電の可能範囲であれば、動くものへの充電までが可能なのだという。その上、送電用モジュールの台の素材にはフレキシブルな樹脂を利用することもでき、様々なデザインを採ることができるようだ。
同社はプレスリリースの中でこの技術を開発した背景・目的について次のように述べている。
「当社は、今後ニーズが高まっていくワイヤレス電力伝送の実現により、電源コード不要の便利な社会の実現に貢献していく予定です」
なお、電界結合方式とは、送電側と受電側に電極を設置し、電極間に発生する電界を利用してエネルギーを伝送する方法。電極間には容量が発生するため、容量結合方式とも呼ばれる。
モバイル機器は端末そのもののハードウェア、ソフトウェアが進化することでユーザー体験のレベルを直接的に向上させるが、こういった周辺技術の進化によっても快適性が増す。今年秋以降の量産が楽しみといったところか。特に今回の村田製作所のシステムは位置の自由度の高さが大きなアピールポイントのようだ。決められた位置に置くのでは多少の手間が生じるが、適当に置いても構わないのであれば利便性はより高まる。
とはいえ、ワイヤレス充電の技術は村田製作所だけでなく、ライバル企業も取り組んでいるため、特に目新しい話題ではないかもしれない。それでも、各企業が切磋琢磨することで進化のスピードが速まるはずであり、嬉しいニュースだ。今後、魅力的な製品がリリースされることを期待したい。
なお、今回の技術はSankeiBizによれば、秋に製品化される玩具への採用がすでに決まっているという。
電気的性能と参考サイズは次の通り。
- 伝送電力:1~10W
- 伝送効率:ワイヤレス伝送部のみで90%以上
- 送電モジュールの外形寸法:50 x 25 x10 mm (3W品でのターゲットサイズ)
- 受電モジュールの外形寸法:10 x 10 x 1.5 mm (3W品でのターゲットサイズ)
【情報元、参考リンク】
村田製作所/プレスリリース
SankeiBiz/携帯、置くだけでワイヤレス充電 村田製作所が開発