この書簡がAdobeに再び火をつけたようだ。
具体的にジョブズ氏が指摘したFlash不採用の理由をまとめると次の6点。
- FlashはAdobe管理下にあり閉鎖的。Appleはウェブに関してはHTML5、CSS、JavaScriptというオープンな技術を採用する。
- 動画視聴もゲームもFlashがなくても問題ない。多くの主要動画がH.264を採用しておりiPhone OS端末で再生できる。iPhoneで視聴できない動画は実質的に少ない。ゲームについてもFlashがなくとも、App Storeには5万点以上のコンテンツが揃っているから問題ない。
- Macのクラッシュ原因の第1位はFlash。iPhone OS端末のセキュリティをFlashのせいで下げたくはない。
- Flashの古い資産はソフトウェア・デコーディングを要求する。ハードウェア・デコーディングと比較すると2倍の消費電力を要求されるため、電池の持ちが悪くなってしまう。
- Flashはマウス操作を前提にコンテンツが設計されている。他方、タッチ操作端末にはマウスオーバーの概念もない。端末がFlashに対応したとしてもそれだけでは不十分で、コンテンツ側もタッチ操作を考慮した設計に変更する必要がある。どうせ修正するのであれば、HTML5に移行すべき。
- サードパーティの中間レイヤーを入れたくない。アプリの水準が下がりかねないし、新技術・拡張機能の即時投入が阻害される。そして、どのような機能が使えるかを第三者に決定させるわけにはいかない。
ジョブズ氏の説明は理路整然とされており、非常に淡々とした印象を与えるもの。詳しくはこちらの記事を参照してほしい。もう少し詳しく書いている。
http://www.gapsis.jp/2010/04/appleflash.html
一見すると彼の主張には納得する箇所も多い。この書簡だけで一部の批判は鎮静化するだろう。
しかし、よく読み、批判的な立場に回ってみると深く突っ込める箇所はとても多い。
Adobeもこのジョブズ氏の理論に反感を持ったのだろう。
最高技術責任者(CTO)のケビン・リンチ氏が即座にブログ「Adobe Featured Blogs」上でやり返した。
彼はブログ記事のタイトルに「Moving Forward」とつけたように、AdobeはAppleがいなくともしっかりと前進していくと主張している。
そして、Google Andorid OS端末への注力についても改めて強調している。
「我々は5月に開催されるイベント『Google I/O』でAndroid搭載スマートフォン向けの『Flash Player 10.1』を一般プレビュー公開するつもりだ。そしてその後、6月に一般リリースすることを楽しみにしている」
彼はジョブズ氏がスマートフォン向けFlashのリリースが延期を繰り返していると言ったことも気に障ったのかもしれない。Flash Playerのリリースステップを具体的に記している。5月19日、20日に米国で開催されるGoogle I/Oでプレビューが発表されることが確定した。そして6月には一般リリースだ。ジョブズ氏は今年後半のリリースになるようだ、と述べていたが、リンチ氏は現行スケジュール通り今年前半の最後、すなわち6月にリリースすると強調している。
さらに彼は、Adobeが注力する対象をApple製品から別のものに移す決定を下したことを改めて記している。
「Adobeが他のパートナーと行っているように、Appleとも協力することができればiPhone、iPod touch、iPadにおいてもFlashを利用できるようにできたと確信している。しかし、先週述べたようにAppleが開発者に課した条件を考慮した結果、我々はFlashとAIRの注力する対象をApple製品から他の製品に移すことに決めた」
AppleとAdobeの亀裂は今後数年程度では埋まりそうもないほどに広がってしまった印象を受ける。
情報元:Adobe Featured Blogs/Moving Forward