今回、我々取材陣に対応して下さったのはパケットビデオ・ジャパンの代表取締役社長を務める高木和典氏と技術部長の吉原徹氏だ。
パケットビデオ・ジャパン 代表取締役社長 高木和典氏。 |
≪パケットビデオ社とは?≫
知る人ぞ知る、知らない人は誰も知らない話だが(※長田MAX注:どのような話でも大体そうじゃないでしょうか?)、パケットビデオ社はあのNTTドコモ(以下、ドコモ)のグループ会社である。ドコモが同社への資本参加を開始したのは2009年のことで、2010年には全ての株式を取得し、今では100%子会社となっている。ドコモの新商品発表会などでもその名を見かける機会が増え、Twonky Beamという一般ユーザー向けアプリの存在によって一般ユーザーへの認知度も大きく向上している。
これまでの歩みなどを詳しく説明して下さった高木社長。 |
そして、2006年にドイツのTwonkyVision社を買収している。これはDLNAがまだニッチだった頃のことだが、DLNAによるビデオ配信の将来性を見込んでの買収だったという。
日本では音楽関係などで著作権保護機能を組み込んだメディアソリューションが普及していった時期だ。そんな中、同社は60機種以上の携帯端末へのソフトウェアの出荷や、インターネット・コンテンツの配信を可能とするメディアプレイヤーをドコモの端末に搭載するなど、この分野で順調な成長を見せる。2007年には同社の「PVConnect」メディア・サーバがDLNAのリファレンス・サーバに認定を受けている。
そして、前述のように2010年にはドコモの100%子会社となり、現在ではTwonky Beamが、著作権保護機能を搭載し、メディア転送が可能なDLNAアプリとして、日本国内で独自の地位を築くまでになっている。
などとわかったような話を書いているが、これはすべて今回の取材で高木氏に聞いた話だ。
Twonky Beamで「U-NEXT」を表示中のタブレット。デバイスを問わず楽しめる。 |
Twonky Beamの概要は下に掲載したYouTubeの動画が分かりやすい。
≪Twonky Beamの新機能とは?≫
さて、Twonky Beamについては、1月22日に開催されたドコモの2013年春の新商品発表会でも紹介されていたが、1月31日に最新バージョンが提供される予定だ。今回のバージョンでは要注目の新機能が追加される。それは日本独自の著作権保護されたテレビ番組の録画データを「ムーブ」転送できる機能だ。日本のテレビ番組データは、著作権保護が掛けられ、コピーや機器間でのデータの移動に制限がある。コピー9回、ムーブ1回で計10回のダビングまでに制限される「ダビング10」という言葉は多くの方がご存知だろう。ムーブでは、録画データを別の機器へ移動させることができる。
従来バージョンのTwonky Beamの機能とは、インターネット上のコンテンツをスマートデバイス上で再生したり、DMR機能を持ったデバイスに転送して表示することだった。DMRは「Digital Media Renderer(デジタルメディアレンダラ―)」の略で、DLNAの機能の一つだ。例えば、DMR機能を持ったテレビであれば、DLNAを介してワイヤレスで映像を飛ばし、テレビ自体で視聴できる。非対応テレビの場合は、DMR機能を持ったセットトップボックス、例えば米Appleの「Apple TV」などを接続することで視聴することができる。
また、ビデオオンデマンドサービスの「U-NEXT」のユーザーであれば、スマートフォンやタブレットなどで動画を視聴する際に使うプレイヤーアプリとしても活用しているはずだ。
このような使い方に対して、最新バージョンでは、ブルーレイレコーダーなどに保存されたテレビ番組の録画データをTwonky Beamがインストールされたスマートフォン等のスマートデバイスにダウンロードできるようになる。要するにムーブして、動画コンテンツの持ち出しが可能になる。家で撮りためた動画をスマートフォンにムーブし、通勤・通学中の電車内など外出先で手軽に視聴できるようになるわけだ。
この時、映像の変換はレコーダー側の機能によることになる。DR録画から長時間録画変換して転送することができるが、解像度はフルHDを扱うことができる。
バージョンアップされる1月31日の時点では、シャープ製の一部レコーダーにだけムーブ機能に公式対応するが、今後はソニーやパナソニックのレコーダーにも対応していく予定となっている。メーカー縛りがなく、様々なメーカーの製品のユーザーが一様に同じ便利機能を使えるのは嬉しい。従来であれば、同じメーカーのレコーダーとスマートフォン、などといった縛りがあり、利便性を得るためにはメーカーを揃えるという壁があったものだが、Twonky Beamの場合はそれが無い。
右が旧バージョンで、左が新バージョン。新バージョンではホームに「マイメディア」ボタンが表示される。 従来からのアイコンも画面右上にあり、「マイメディア」への導線が2つに増えた。 |
「マイメディア」では同じWi-Fiネットワーク下の機器のリストが表示される。 |
「AQUOS BD [BD-W520]」内の録画番組データを表示。 |
番組をタップすると、ストリーミング再生かダウンロード(ムーブ)を選ぶポップアップメニューが表示される。 |
ダウンロード中はプログレスバーで進捗を教えてくれる。 また、タップすると確認メッセージが表示され、キャンセルすることもできる。 |
ダウンロードが終了した録画データは「マイメディア」の「ダウンロード」フォルダに格納される。 ここではNHKの「きょうの料理」をダウンロードした。 |
ダウンロード(ムーブ)が完了した番組をフルHD液晶を持つ「Xperia Z」で視聴中。 著作権の関係でモザイクを入れているが、ハイビジョン映像なので美しい。 |
また、新バージョンでは、NTTぷららが提供する映像配信サービス「ひかりTV」のセットトップボックスと連携し、フルHDで提供されている「ひかりTV テレビサービス」の番組60チャンネル以上をスマートデバイス上で高画質のまま視聴することもできるようになる。しかも、今春リリース予定の「ひかりTV」の新しいセットトップボックスを使えば、ムーブ機能も利用できる。
≪Twonky Beamの最新バージョンの利点とは?≫
実際にはTwonky Beamを使わずとも、従来からレコーダー内の録画コンテンツをモバイルデバイスに転送する技術や機能はあったが、ソニー製レコーダーの録画データはソニー製スマートフォン・タブレットの「Xperia」にしか転送できないなど、メーカーの縛りがあった。これを解き放つのが新Twonky Beamというわけだ。
ちなみに、新バージョンのTwonky Beamでは、「DTCP-IP」プロトコルでのデータ転送を利用する場合は有料となる。アプリ自体は無料配信されるが、この機能だけは「アプリ内課金」システムを使って有料で提供される予定だ。ただし、有料機能の詳細、料金等の提供条件は1月31日の最新バージョンのリリース時に公開されるので、それをお待ち頂きたい。
なお、「DTCP-IP」というのは地デジなどの著作権保護されたテレビ録画を転送する場合に使う必要があるプロトコルなので、新機能であるムーブ機能は有料だと理解すればいい。レコーダー内の録画データをスマートフォンやタブレットで視聴する場合には有料機能が必要になるわけだ。
しかし、ドコモのスマートフォン・タブレットのユーザーの場合は、この新機能が期間限定で無料で提供される予定だ。期間は2013年1月31日から2014年3月31日までの予定。ドコモ以外のユーザー、例えばau(KDD)やソフトバンクモバイル等、他の通信キャリアの端末でも、料金を支払えば新機能を使うことができる。
何にしても、録画データを持ち出すことができるというメリットは大きい。
その価格如何では無料で新Twonky Beamを使えるドコモの端末のバリューも上がりそうだ。
インタビュー後、なぜかスタートレックの話で盛り上がる高木社長と一条。スタートレックの熱い談義に花を咲かせる。 |
≪おまけ≫
取材時に記憶に残った会話があったため、紹介しておきたい。
長田MAX | いやあ、こんなに綺麗に見られるなら、ワンセグを見る気がしなくなっちゃいますね。 |
高木社長 | どこでも見られるのがいいですね。もうメディアは時間の取り合いですよね。 |
一条 | 動画を見始めると仕事する時間がなくなっちゃいますよね。 |
長田MAX | 僕は睡眠時間がなくなるんですよね。最近は深夜に仕事を終えて、ドラマを1話だけ見ようと思って朝まで5時間ぐらい見ちゃうことがよくあるんですよねー。アハハッ、あれ? |
一同 | ・・・・・・ |
読者諸氏、これがガプシスだ。
※長田 注:たまにです。毎日ではありませんのでご安心下さい。GAPSISをより良いサイトにすべく睡眠もとりつつ、力を入れてまいります!
(記事:一条真人。編集:GAPSIS編集部)
【情報元、参考リンク】
・Google Play/Twonky Beam
・App Store/Twonky Beam
・パケットビデオ社
・GAPSIS/Twonky Beamが進化へ! フルHDに対応。ひかりTVやレコーダー内の映像をフルHDでスマホ視聴が可能に