ファーウェイの製品(国内未発売機種も含む)
今挙げた製品では「GP02」を除き、製品名に「HW」というアルファベットが入る共通点がある。一般に通信事業者が販売する携帯電話(フィーチャーフォン及びスマートフォン)端末をはじめとする製品の名前には、製造メーカーを示すアルファベットの略号が入る。シャープなら「SH」、富士通なら「F」、パナソニックなら「P」などのようにだ。
「HW」は中国シンセン市に本拠を構える「Huawei」(読み:ファーウェイ)を示している。
ファーウェイは、9月16日にソフトバンク向けに「Vision 007HW」というスマートフォンをリリースした。同社の日本法人であるファーウェイ・ジャパンはこの端末のPRの一環として10月6日にブロガーミーティングを開催した。10名~20名程度のブロガーを集めて開かれたこのイベントでは、同社の紹介とVision 007HWのタッチ&トライが行われた。
今回の特集はこのイベントの内容から構成したいと思う。
第1回となる本記事では、ファーウェイがどのようなメーカーなのか紹介する内容だ。第2回ではVision 007HWの紹介、第3回ではVision 007HWのレビューという流れにしたい。
ファーウェイの設立は1988年。かれこれ20年以上事業を行っていることになる。最初は中国でインフラ関係からビジネスを始め、グローバルに事業を展開。インフラ関係では今や世界第2位のシェアを占めるまでに成長している。その後、端末事業を2003年に開始する。グローバルにビジネスを展開していることもあり、拠点の数、従業員の数は多い。従業員は6月時点で全世界12万人以上に達し、その国籍は150程度にまで及ぶ。事業自体は140以上の国で展開されている。
これまで安定的に成長を果たし、2010年度には日本円換算で約2兆3千億円の売上高を記録した。2011年度も順調な成長を示し、目標を達成できる見込み。2011年度の目標は1,990億中国元(2010年12月31日の為替レート:1元=12.4円換算で約2兆4,676億円)。事業の規模を示す数字としては、世界の3分の1の人口に通信環境を提供し、世界上位50社の通信事業者のうち45社で製品が採用され、世界第2位の通信ソリューションプロバイダーというものがある。
現在の主なビジネス展開分野は4つ。キャリアネットワーク(通信インフラ系)、エンタープライズ(企業向け)、端末、その他となっている。
この4つの中で、端末に関して掘り下げていきたい。
端末の製品ポートフォリオは、モバイル・ブロードバンド(モバイルWi-Fiルーターなどのデータ通信端末)、携帯電話端末、家庭向け端末(デジタルフォトフレームなど)の主に3つのカテゴリに分けられる。端末事業も成長しており、2010年度には45億ドルの売上を達成。2011年度目標は60億ドルだ。
前述したように事業はグローバル展開されており、それは端末事業についても同様。140か国以上に拠点を構え、16の地域本部を設置。日本での事業はファーウェイ・ジャパンが担当している。また、ファーウェイは研究開発を重視しており、55%の社員が研究開発部門に従事している。
開発拠点は世界9か所。米国、欧州、日本、インド、中国に9か所のR&Dセンターを構え、各拠点で様々な研究開発に取り組んでいる。米国ではRF、OS、チップセット、欧州ではID、イノベーション等、日本では電子部品、MDなどといった具体で、地域別に異なる分野に取り組んでいる。
また、具体的な商品の企画においては各国・各地域別にユーザーの好みなどが異なるので、地域ごとに商品企画拠点を設け、各地域別の対応を採っている。米国、欧州、日本、インド、中国の5か所に商品企画センターが設置されている。加えて、製品に導入されるアプリケーションについては、各地域別にパートナーと協力して取り組まれている。例えば日本においてはイー・モバイル向け製品にはイー・アクセス始め、各コンテンツプロバイダー(CP)と、ソフトバンク向けにはソフトバンクモバイル及び各CPと、などのようにだ。
ファーウェイにとって端末事業は主力事業の一つになっている。ファーウェイの強みは通信のインフラから端末まで「End to End Solution(エンド・トゥ・エンド・ソリューション)」を提供できる点にあり、端末はユーザーが直に手にする「End」部分にあたり、非常に重要な事業と位置付けられている。
その端末事業だが、将来の目標として、今後3年以内に世界トップ5に入る携帯電話端末ベンダーになることが挙げられている。現在は10位程度の位置にいるが、グローバルに成長を続け、まずは5位を目指す。一方、モバイル・ブロードバンド端末については、例えば国内ではイー・モバイル向け「Pocket WiFi」などでリーディングポジションにいるため、今後もそれをキープする。家庭向け端末についても、今後のホームソリューションにおける重要なポジションを占める製品になる可能性があり、力を入れていく。
とはいえ、「ファーウェイ」のブランド認知度については、売上規模に比べてそれほど高くない。各事業のうち、特に端末販売についてはブランド認知度が大きな影響を与えるため、グローバルでブランドを確立していくための取り組みが進められている。今後3年以内に世界トップ5の携帯端末ベンダーになるために、3ステップでの展開が計画されている。
まずは主に中国とイギリスでのブランディングに注力する。中国はファーウェイにとっての本拠であり、イギリスはブランディングにおいて非常に重要な戦略国だからだ。続いて米国、日本、インド、インドネシア、オーストラリアに活動を拡大し、2013年にはブランド力をグローバルに高めていく活動に移る。
ブランド認知度を高める活動の一環として、イタリアサッカーのスーパーカップ 2011の独占スポンサーに就任している。8月6日に北京で開催されたACミランとインテルのカードがそれだ。インテルには日本代表の長友佑都選手が所属しているため、日本でも当初は大きく注目されたが、長友選手は残念ながら怪我により欠場。しかし、それでもスーパーカップはファンにとってシーズン開幕前の大きな楽しみの一つであり、世界的に注目度が高い。ファーウェイはその試合のスポンサーを務めた。
次に日本市場向けの製品を詳しくみていきたい。
日本市場に関しても海外市場と同様に通信モジュール、モデル&モバイルWi-Fiルーター、携帯電話端末、家庭向け端末を展開している。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、イー・アクセス(イー・モバイル)といった大手通信各社に製品が採用され、モバイルWi-Fiルーターなどではヒット商品も生まれている。スマートフォンでは9月にリリースされたVision 007HWや、ストレート型スマートフォンsmart bar S42HWなどが目新しい。他にも、キッズケータイ HW-02Cなど注目された。
注:写真の端末には日本未発売品も含まれている
ファーウェイ・ジャパンにおける端末販売の歴史を振り返ると、2007年にイー・モバイルからデータ通信端末「D01HW」をリリースしたのが初の製品だ。翌年、イー・モバイルから携帯電話「H11HW」を発売。その後も取扱い通信事業者が増え、2011年5月にはKDDIも加わり、現在は4つの通信事業者から製品が販売されている。
日本市場における現在のポジションは、データ通信端末については、2008年~2010年に3年連続で「Gfk Japan」調べで、データ通信カード・端末カテゴリにおいて年間シェア1位に選ばれている。デジタルフォトフレームでは、ファーウェイ調べで、通信機能付きデジタルフォトフレームにおいてシェア1位。また、9月にKDDIから発売された「Photo-U2 SP03」は2011年のグッドデザイン賞を受賞している。
右:Gfk Japanのデータ通信カード・端末カテゴリで2008年~2010年まで年間シェア1位
今年のPhoto-U2 SP03のほか、昨年にはPhotoVision SoftBank HW001Sがグッドデザイン賞を受賞
しかし、今後、端末メーカーとして成長していくには、データ通信端末や家庭向け端末のみならず、スマートフォンの販売も重要だ。そこで同社は数多くのスマートフォンをグローバルに展開している。日本市場にもこれまで、Androidスマートフォンをイー・モバイル向けに3機種、ソフトバンク向けに1機種投入している。内訳はイー・モバイル向けが「Pocket WiFi S S31HW」「Pocket WiFi SⅡ S41HW」「smart bar S42HW」で、ソフトバンク向けが9月16日に世界に先駆けて発売されたグローバルモデルのVision 007HWだ。
イー・モバイル向けにはAndroidタブレット「A01HW」も提供されている。
左:Pocket WiFi S S31HW、右:Pocket WiFi SⅡ S41HW
*両機種の画像縮尺比は実寸比ではありません。
左:smart bar S42HW、右:A01HW
*両機種の画像縮尺比は実寸比ではありません。
下に掲載した写真は、8月3日に北京で行われたVision 007HWの発表会の模様をおさめたスライドとVision 007HWの端末写真。スーパーカップの前に開催されたこともあり、インテルの選手も参加してプロモーションが行われた。
9月16日に発売されたVision 007HW(ソフトバンク向け)
続く第2回ではVision 007HWの紹介をしたい。
第2回へ続く
UPDATE
イー・モバイル向けスマートフォン「GS02」について特集した記事を第4回、第5回、第6回で公開。
【情報元、参考リンク】
ファーウェイ・ジャパン
ソフトバンク/Vision 007HW製品紹介ページ